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三老吸酢図:富岡鉄斎の世界




三老とは蘇東坡、黄山谷、仏印禅師をいう。この三人が集まって酢を飲んだという故事が中国に伝わってきた。三者はそれぞれ、儒教、道教、仏教を代表するので、三教一致の象徴的な話になっている。三聖吸酢とも三養吸酢ともいわれる。

手前が黄山谷、中ほどが仏印禅師、向こう側が蘇東坡だろう。故事では、蘇東坡と黄山谷が連れ立って仏印禅師を訪ねた際に、仏印禅師が桃花酢を出してもてなしたという。あまりのすっぱさに、三人そろって顔をしかめたとある。この絵は、三人のいかにもすっぱそうな表情がよく描かれている。

賛には、王陽明の文章の一節が記されている。王陽明も三老吸酢図を見たことがあるらしく、その折の印象を記した文章(書三酸)である。曰く、鼻で三斗の酢を吸うような辛い目にあってこそ宰相になることができるという。ところが蘇東坡はたった一滴で顔をしかめた。これでは三斗の酢を飲むなどできない。だから彼が宰相になれなかったのは当然のことだ。

富岡鉄斎は蘇東坡に心酔しており、また宗教心もあつかったので、このようなテーマはかれにぴったりといえよう。

(1918年 紙本墨画着色 137.7×40.4cm 宝塚市、清荒神清澄寺)





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