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網川蕉雪図:富岡鉄斎の世界




網川とは唐の大詩人王維のこと。その王維が描いたという雪景図を意識しながら描いた作品である。賛に、その意図が記されている。曰く、「陳継儒がいうに、王維が描いた雪蕉図が睨雲林の清必閣にあり、楊廉夫や雲林自身も題跋をかいた」と。

寒々とした雪景色のなかで、高士が室内で寝ている様子が描かれている。描き方は実景どおりではなく、噴出しの部分にそれらしく描くといった方法をとっている。

これには有名な逸話がある。袁安が雪の日に室内で寝ていると、役人がどうしてだとわけを聞いた。そこで袁安は、自分が外出して食を乞えば、他の人間が飢えることになるからだ、と答えた、という。

渓流沿いの樹木や小屋の屋根は白抜きであらわされ、ところどころ朱をほどこしてアクセントをつけている。静寂な雰囲気のなかに、人間の息吹が伝わってくるような作品である。

(1919年 紙本墨画淡彩 133.6×64.4cm 宝塚市、清荒神清澄寺)





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