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教祖渡海図:富岡鉄斎の世界




「教祖渡海」とは、仏教、儒教、道教の教祖たちが仲良く海を渡るというもので、「三聖吸酢」同様、三教一致をうたったものである。鉄斎好みのモチーフといってよい。

賛には、「人参、甘草、白朮、陳皮、中に毒薬小林の一技あり」とある。諸聖人の教えは、人参、甘草、白朮、陳皮のようにおだやかな作用だが、小林のは毒薬のように激しいという意味。人参以下四つに、釈迦、観音、孔子、老子をかけ、小林にダルマをかけているようである。

この賛は、室町時代の禅僧万里周九の詩の一節。この詩に感心して、それをイメージ化したということらしい。諸聖人を乗せた船がいままさに陸を離れ、怒涛うずまく大海に漕ぎ出たところを描く。荒々しい筆遣いが躍動感をかもし出している。

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これは諸聖人の部分を拡大したもの。手前から、釈迦、観音、老子、孔子、立って楫をとっているのはダルマである。

(1921年 紙本墨画淡彩 146.3×40.2cm 東京国立近代美術館)





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