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不動明王開化:河鍋暁斎の戯画 |
「不動明王開化」と題するこの絵は、「暁斎楽画」シリーズの一枚(第五号)だ。「暁斎楽画」は明治七年(1874)沢村屋から出版した大判錦絵のシリーズで、明治維新にともなう文明開化の諸相を皮肉たっぷりに描いたもの。風刺のさびと色彩の豊かさが独特のコントラストを醸し出し、江戸っ子の人気を博した。 この「不動明王開化」は、文明開化に取り残されまいと勉強にいそしむ不動明王とその眷属をユーモラスに描いている。不動明王は、転法輪文様の浴衣を着て「新聞雑誌」の最新号らしきものを読んでいる。この雑誌は明治四年に発刊されて以来、文明開化の進展具合を報告するものとして貴重がられた、これを読めば不動明王も世の中の動きを見通せるというものだ。 眷属の制多迦童子は牛鍋用の肉を切り、矜羯羅童子のほうは徳利を右手に持ちながら、不動明王の炎火に鍋をかけて、食事の支度をしている様子。酒の銘柄が剣菱なのがミソだ。剣菱は、維新のころ最も人気のある酒だったらしい。 この絵を描いた当時、仏教界は廃仏毀釈の嵐に飲み込まれて青息吐息の状態だった。そうなったのも時代の波に乗り遅れたためで、今後この国で生き残ってゆくためには、仏教界といえども文明の波に浴さねばならない。そんな意気込みが、この絵からは伝わってくる。 (1874年 大判錦絵 河鍋暁斎記念美術館) |
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