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新板かげづくし天狗の踊り:河鍋暁斎の戯画




「新板かげづくし」は、慶應三年(1867)に出版した影絵シリーズ。このシリーズは、回り灯籠に江戸風鈴をあしらったものに、灯籠に移った影を見世物にするもので、軍人の戦闘を描くものや、物の怪を描いたものなどがある。「天狗の踊り」と題したこの一枚は、文字通り天狗たちの踊る様子を影絵で描いている。

影絵であるから、絵のもとになる本体があるわけだが、それは回り灯籠のなかにいるということになっている。その影を見ても、本体の動きが如実にわかるように描かれている。天狗を見分けるポイントは長い鼻だから、この影絵たちにも長い鼻がついている。その鼻の方角を見れば、天狗がどちらを向いているかがよくわかるというわけだ。

下の方に、太鼓を叩くものや三味線を弾くものがいる。太鼓を叩く者だけに鼻が見えないのは、顔を後ろ向きにしているからだろう。その他の天狗たちにはいづれも鼻がついているのが見える。その天狗たちの動きを見ていると、こちらまでが浮かれたくなるから面白い。これらの天狗たちは外国人を暗示しているとされるが、別に日本の天狗であっても、絵としては一向に差支えがない。

左下に落款に添えて印影が押されているが、それを見ると狂という文字をウサギの模様に重ねている。ウサギはこの影絵を出版した卯年にちなむ。そのウサギの背中にサイコロを描き、狂の文字と合わせて狂斎と読ませる仕掛けだ。

(慶應三年 大判錦絵 河鍋暁斎記念美術館)






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