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放屁合戦絵巻:河鍋暁斎の戯画




「放屁合戦絵巻」は、戯画師暁斎の面目躍如といった作品だ。放屁合戦の模様にことよせて世のなかを屁とも思わぬと笑い飛ばしている。暁斎はこのテーマの絵巻を二つ作っており、これはそのうちのひとつ。慶應三年に制作した。この手の戯画的な絵巻としては、鳥羽僧正の「鳥獣戯画」のほか、平安末期の仏絵師定智の「へひり比べ」などがある。この作品はそうした伝統を意識したのだろうと思う。

九メートルに及ぶ長い巻物に、屁の準備から屁のひり合いを経て、屁の勢いで俵を吹き飛ばすまでの経過が、時間を追ってユーモラスに描かれている。

上は、屁の原材料たる芋を調達するところを描く。大きな鍋に芋を放りこんで煮ている。芋が煮えあがるとざるに盛って男たちのところへ運び、そこで芋を食わせて屁を生産し、それを腸内にためるというわけだ。



屁がたまったところでさっそく試し打ちとばかり、二手に分かれた男たちが互いに尻を向けあって放屁合戦に及ぶ。自分の屁の勢いでよろめくものもいる。



これは、敵に尻を向けて屁を放っているところ。金玉もあらわに尻の穴を敵に向け、そこから勢いよく屁を放っている。屁の勢いで倒れるものもいる始末だ。



これは袋の中にためた屁を一時に相手に向かってかましているところ。屁の勢いがすさまじいあまりに、かまされた者たちはみな吹っ飛ばされてしまう。



しんがりには、屁の勢いで俵をとばす男たちがくる。俵ともども屁をかまされたものどもは、みな恐れ入って逃げ惑うばかりだ。

(慶應三年 紙本墨画淡彩 28.2×897.0㎝ 河鍋暁斎記念美術館)





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