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動物群舞図:河鍋暁斎の動物絵




河鍋暁斎は動物を主人公にした数多くの戯画を描いた。それらの動物たちは、いずれも人間的な仕草や行為をしており、擬人化されている。単に擬人化というにとどまらず、風刺やアイロニーが込められてもいる。その点では人間さまをフィーチャーした暁斎流戯画の動物版といってよい。

「動物群舞図」と題したこの絵は、平安朝の衣服をつけた動物たちが、楽器を演奏したり踊りを踊ったりしている姿を描いている。動物に擬人化の意図が働いていることは読み取れるが、なぜ平安時代の衣装が出てくるのか。

もしかしたら暁斎は、日本の国が王政復古をきっかけにして一気に先祖返りしたことをあてこすっているのかもしれない。王政復古の結果、公家たちが政府の権力を動かすようになった。彼らの中には、まさに平安時代の服装をして政治のかじ取りをするものもいたし、服装は西洋式でも頭のなかは平安時代そのままだったものも多かった。暁斎はそうした時代の風潮を、動物たちの姿を借りてあてこすったのではないか。

真ん中には赤い袴をはいて枇杷を奏でる猫が描かれている。よく見ると尻尾が二つに割れているので、猫又という怪物だとわかる。この猫の上部には、幣帛をささげるウサギと鉦を叩くイノシシがいる。以下、反時計回りに、太鼓を叩く狼、両足で拍子をとる狗、扇子を広げる猫、衣を引き被る狐、両手で音頭をとるイノシシ、花飾りのついた山笠を被る狸が描かれている。みなそれぞれ愉快な感じが伝わってくる。

(明治四年 紙本着色 73×53㎝ リンデン美術館)






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