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人物三長図:河鍋暁斎の戯画




それぞれに長い特徴を持った三人の人物を配した図柄。書物を読む長い頭の男を中心に、足の長い男がその長頭のてっぺんあたりをカミソリで剃り、手の長い男が頭を布巾で拭いている様子が描かれている。これも何を寓意しているのかよくわからない。つまらぬ詮索は抜きにして、純粋に図柄の面白さを楽しんだほうがよいのかもしれぬ。

長頭は福禄寿だという解釈もある。その福禄寿の頭のてっぺんをカミソリでするという図柄は暁斎の他の絵にもあるが、その絵では頭にはしごをかけててっぺんによじ登っている構図だった。この絵の場合には、足が長いためにそんな工夫はいらないとばかり、すっくと立ちあがって頭のてっぺんを剃っているわけだ。

一方手の長い男は、この絵に独自の工夫だ。手は頭の長さにほぼ引き合っているので、無理をせずにまんべんなく頭を拭くことができる。



これは長頭の男の胴体の部分を拡大したもの。男は何食わぬ顔で書物を読んでいる。その手前では手長男が長い手を伸ばして長頭を拭くのに忙しく、また長頭の背後には足長の足がのぞいている。明治初年の散発とはこういう具合にのんびりした雰囲気だったのだろう。

(明治四年以降 紙本淡彩 128.5×31.5㎝ 河鍋暁斎記念美術館)






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