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地獄極楽図:河鍋暁斎の仏画





河鍋暁斎は幽霊の絵とともに地獄の絵もよく描いた。幽霊と地獄の間にどんな関係があるか、いまひとつはっきりしないが、幽霊の方が日本古来の迷信に根差しているのに対して、地獄のほうは仏教、とりわけ浄土信仰と密接な結びつきがあったことは言えるようだ。地獄は浄土の正反対として、成仏できない罪深い人たちが落ちてゆくところとしてイメージされていた。そういう目に合わないためにも、人は阿弥陀様を深く信仰せねばならぬと言いきかれてきたわけだろう。

「地獄極楽図」と題するこの絵は、地獄と極楽の双方をテーマにしているが、なぜか地獄のほうが詳しく描かれている。極楽の様子は、一旦地獄に落ちた人々が、地蔵菩薩によって救済される場面として描かれているばかりである。地蔵菩薩が地獄における救済者だとすれば、この図はもっぱら地獄を描いたと言ってもよい。

中央部に閻魔大王がどっしりと座り、閻魔帳を見ながら罪人たちの罪業を評価している。その罪の度合いに応じて、どんな責め苦がふさわしいか判定するわけである。罪人たちの生前の所業は、閻魔の前に据えられている浄玻璃鏡に映し出される。その鏡には、老人を背後から襲って殺し、その遺体を川に投げ込んでいるところが映されている。

閻魔によって罰を決定された罪人たちは、罰に応じて責め苦を加えられる。その責め苦の様子が詳細に描かれている。画面左下には、業火の中に投げ入れられる罪人、画面下には獄卒によって呵責を加えられている罪人、画面右上には己の運命を嘆き悲しむ罪人の表情がそれぞれ描かれている。



これは閻魔大王の部分を拡大したもの。閻魔は浄玻璃鏡に映し出された罪人の所業に応じて、罰を決定したうえで、閻魔帳に記録しているところである。閻魔もその取り巻きたちも中国風の服装をしている。

(明治初年 麻布着色 199.6×324.4㎝ 東京国立博物館)






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