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文治元年平家の一門亡海中落入る図:月岡芳年




月岡芳年は早熟な絵師だった。今に伝わる作品の中で最古のものは、嘉永六年(1853)満十四歳のときのものだ。この時芳年は国芳に入門して三年目だったが、すでに先輩にひけをとらないような技術の冴えを見せていた。

「文治元年平家の一門亡海中落入る図」と題したこの版画は、壇ノ浦の決戦で敗れた平家一門の姿を描いている。画面中央には、碇を背負って海中に身を投げんとする平家の大将平知盛を配し、その右側には入水の準備をする平家の女房たちを、左側には武将たちを配している。

知盛の姿は歌舞伎「義経千本桜」の場面からとられている。こうした図柄は、武者絵を得意とした師国芳の画風をかなり忠実に受け継いでいると言える。



これは、知盛の部分を拡大したもの。海底の水の描き方が独特だ。その海底には多くの蟹がいるが、これは平家ガニのつもりだろう。

(大判三枚続)





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