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桃太郎豆蒔之図:月岡芳年




月岡芳年は若干二十歳の頃には一人前の浮世絵師として人気を博していたようである。その頃の彼は、武者絵を中心として色々なジャンルに挑戦していた。「桃太郎豆蒔之図」と題するこの作品はその一点。三枚組のそれぞれに「一魁齋芳年」の署名がある。芳年は師国芳の一字をもらったものだ。

豆蒔は今では節分の行事だが、幕末頃までは大晦日に行われていた。絵の上部にある注連飾りが、正月の準備を感じさせる。

中央に豆を蒔く男が、その左側に豆を蒔かれて退散する鬼たちが、右側には家のなかに招き入れられた福の神が描かれている。面白いのは、鬼たちの背後にうっすらと描かれている幽霊たちだ。この作品が作られた安政六年にはコレラが大流行し、何万という人が死んだ。この幽霊たちは、そのコレラの犠牲者たちをあらわしているものと考えられる。



これは画面左側の部分を拡大したもの。手前の男や鬼の明瞭な姿と比較して、背後の幽霊たちはぼんやりと描かれている。

(安政六年<1859> 大判三枚続)





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