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向傷与三蝙蝠安(東錦浮世稿談):月岡芳年




「東錦浮世稿談」は、幕末期に人気のあった講談に取材したもので、五十図からなる。慶応三年から四年にかけて、錦盛堂以下五つの版元から出版された。すべてではないが、多くの図柄に血みどろの光景が描かれている。

これは「向傷与三蝙蝠安」と題した一点。乾坤坊良斎の講談が原作で、それをもとに歌舞伎「与話情浮名横串」が作られた。昭和時代に春日八郎が歌った流行歌「お富さん」は、それをもとにしたものだ。

切られ与三郎こと向傷の与三は、情婦のお富が金の為に奥州屋に手込めにされたことで、奥州屋を殺して金を奪い取った。そこを蝙蝠安に見られてゆすられるのだが、逆に蝙蝠安を殺してしまう。

これは、与三が蝙蝠安を出刃包丁で殺す場面。出刃包丁は血でまっかに染まり、蝙蝠安は全身を切られて息も絶え絶えだ。一方与三のほうは、顔色ひとつかえず、包丁で相手を切り刻む。無残な雰囲気が伝わってくる一枚だ。

(慶応三年<1867> 大判)





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