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御茶水蛍、茶の水雪:小林清親の東京名所図



(御茶水蛍)

これはお茶の水付近の神田川での蛍狩りの様子を描いた図柄。風景は闇に沈んでよく見えない。ただ闇の中に無数に飛び回る蛍の光と、それを水上から追いかける船の明かりが見えるだけだ。

お茶の水界隈にかぎらず、神田川はかつては蛍狩りの名所だった。筆者の子どもの頃(昭和30年代)まで、御茶ノ水のちょっと上流部分の飯田橋あたりで蛍狩りをやった記憶がある。その折はさすがに、自然の蛍よりも、人間の手で運ばれてきた蛍のほうが多かったように思う。

お茶の水界隈での神田川の両岸は、いまではコンクリートの壁で蔽われているが、明治初年には、このような自然の堤がまだあったわけだ。総武線の線路も、医科歯科大寄りの鉄橋も見えない。


(茶の水雪 明治十三年)

「茶の水雪」と題しているが、川に架かっている橋は水道橋である。水道橋というのはもともと、神田水道の水を神田川の上を渡すために作られたもの、つまり水道施設の一部だ。

地形から判断して、画面の手前が御茶ノ水方向。お茶の水は水道橋より高いところにあるので、御茶ノ水から水道橋へは坂道を下ることとなる。下ったその先、今の水道橋があるあたりの少し手前に、かつての水道施設としての水道橋があったわけだ。







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