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襟おしろい:鏑木清方 |
大正十三年(1924)、朝日新聞が月めくりカレンダーのモチーフに美女画を採用することとし、清方にも注文がきた。そこで清方は、カレンダーらしく肩の凝らない絵として、女の何気ない表情を描いた。「襟おしろい」と題するこの絵がそれである。 襟元や顔におしろいをたっぷり塗り付けた女が、放心したようにあらぬ方を見ている。その視線の作には何があるのかはわからない。おそらくなにもないのであろう。そのことは、女の放心した表情から伝わって来る。女が一番魅力的に見えるのは、放心した時だということを、清方は日頃の体験から知っていたのだろう。 モデルは、妻の照だという。この年清方は満46歳だったから、七つ年下の照は三十九歳だった。三十九歳といえば、まだまだ女ざかりである。この絵の中の照には、セックスアピールも十分に感じられる。 (1924年 絹本着色 47.8×40.6㎝ 鎌倉市) |
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