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新富町:鏑木清方




「築地明石町」から二年後に、鏑木清方は「新富町」を描いた。前作同様美人画で、前作が市井の女性をモチーフにしていたのに対して、この絵のモチーフというかモデルは、つぶし島田の髪型から知れるように、芸者である。新富町は、関東大震災までは、府内有数の三業地の一つだった。また、歌舞伎小屋があったりして、結構賑やかな土地であった。

新富町は、明石町に隣接し、築地のはずれにあった。この絵が作られた昭和五年にはまだなかったが、後になって川筋もできた。いまでもその余韻を見ることができる。この芸者は、その川筋の道に立っているのかもしれない。遠くに見えるのは、新富町の仕舞屋であろう。

女は渋蛇の目の雨傘をさしている。雨が降っているのであろう。その傘を手前にかざすようにさしているのは、雨足が強いからであろうか。高下駄をはいた足元をたしかめるようにして歩く姿に、なかなかの色気を感じる。



これは女の上半身を拡大したもの。傘のさしかた、握り方にも、芸者の心意気が感じられる。

(1930年 絹本彩色 174×74㎝ 東京国立近代美術館)





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