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三遊亭円朝像:鏑木清方 |
昭和初期の鏑木清方は、「築地明石町」を始めとして、人物画を好んで描いた。「三遊亭円朝」もその一点。清方は、円朝とは子どものころから見知っていた。父の経営するやまと新聞が、円朝の人情噺を筆記して、それを掲載していたということもあって、清方はその筆記を手伝ったこともあるようだ。また、十七歳の時には、円朝の旅行に随行して、各地を回ったりしている。そんな誼から、清方は円朝に非常な親しみを抱いていた。 円朝は、当時の日本人としては大柄で、顔つきは東大寺の仁王像のように彫が深かったという。この絵には、そんな円朝の面影が如実に描かれているということだ。 円朝は高座に腰を据え、これから話を始めるために、ひと呼吸おいているところだ。当時の噺家は、いまのようにいきなり話し始めるのではなく、前段にいろいろ工夫をしていた。まず、身の回りに扇子や懐紙や手ぬぐいを置き、燭台の蝋燭に自分で火をつけ、湯飲みに入れた白湯を飲みながら、じろりと客席を見回す。そうして気分が高まったところで、ゴホンと咳ばらいをしてから話を始めたという。 この絵には、そうした様子が如実に描かれている。円朝の表情は、気分の高まりのせいか、鬼気があふれているように感じさせる。 (1930年 絹本着色 138.5×76.0㎝ 東京国立近代美術館) |
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