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明治風俗十二か月その二:鏑木清方




四月は花見。向島堤の花見の様子を描いたもの。現在では、東京で花見と言えば上野の山だが、明治の半ばころまでは、向島堤が都下最大の花見の名所だった。向島にはまた、成島柳北を始め多くの文化人が住み、文化的な香りもただよっていた。この絵に描かれている女性たちは、雛妓なのだろう。色華やかな振袖姿で、枝に咲き誇る桜の花を見上げている。



五月は菖蒲湯。五月の節句に菖蒲湯につかる風習は、室町時代ころまで遡る。湯船に菖蒲の葉を浮かせて入浴すると、さまざまな薬効があると言われた。この絵の中の女性は、おそらく湯ぶねからあがって、いずまいを正しているところなのだろう。窓の向こうに見えているのは墨田川。ここは橋場あたりにある寮をイメージしているという。



六月は金魚屋。水槽に金魚を泳がせて飼っている店を、少年とその姉らしき女性がのぞきこんでいる。金魚の養殖は墨田川の東側にある湿地帯でさかんに行われていた。この絵の中の金魚屋は、そうした養殖業者から買い入れた金魚を、小売業者に仲卸する店のようである。網で金魚をすくっているのは、この姉弟のリクエストにこたえたものか。





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