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明治風俗十二か月その三:鏑木清方




七月は盆灯篭。東京の盆は新暦になっても七月。これはその盆に飾る灯篭をモチーフにしたもの。軒先に下がった盆灯篭の下に、二人の娘が床几にこしかけて、なにやらおしゃべりをしている。一人は団扇をもっているが、これは五代目菊五郎の配り団扇だそうだ。灯篭も、菊五郎のお祭り佐七をあしらった錦絵を切り抜いて作ったものだという。



八月は氷店。よしず張りの粗末な小屋のなかで、娘が氷をカチ割っている姿は、なかなか涼しげだ。屋根には柳の葉がかかって見えるが、これは墨田川の河沿柳だそうだ。足元には、朝顔の鉢が見える。



九月は二百十日。二百十日は昔から台風の当たり日。この絵の中でも、空にはただならぬ雲行き。落ち葉が舞っているのは、風が強いせいだろう。女が身を乗り出して、不安そうな表情で空模様をたしかめている。これからひどい嵐になりそうなら、それなりの支度をせねばならぬ。





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