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一葉:鏑木清方




樋口一葉の肖像画を清方は、昭和十五年に催された「紀元二千六百年奉祝展」に出した。清方は一葉に直接会っていないそうである。一葉晩年の小文「女子書簡文」に挿絵をつけたというだけの間柄。それでも挿絵を引き受けたのは、日頃一葉を愛読していたかららしく、清方は一葉が好きだったようだ。その好きな対象たる一葉を、節目の行事の華やかなモチーフに選んだわけである。

一葉を描くにあたっては、一葉の妹邦子の顔を参考にしたほか、全集所載の写真を参考にしたという。妹邦子は一葉に似ていたとのことだ。一葉の一周忌に清方が招かれて以来、折々会っていたらしい。

ポーズを決めるにあたっては、一葉の随筆「雨の夜」をイメージしたという。「庭の芭蕉のいと高やかに伸びて・・・小切れ入れたる畳紙取り出し、何とはなしに針をもたられぬ」とあるが、その文章を彷彿させるような、一葉の描き方である。


これは上半身を拡大したもの。現行五千円札の図柄と比較して、こちらのほうがきりりと引き締まって見える。

(1940年 絹本着色143.0×79.3㎝ 東京芸術大学)





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