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春雪:鏑木清方




清方は敗戦を疎開先の御殿場で迎えた。敗戦はやはりショックだったようで、しばらく制作から遠のいたのだったが、翌昭和21年に、戦後初めての日展が開催されると聞いて、急に創作意欲がわいてきて、一気に描き上げたという作品が、この「春雪」と題する一点だ。

春、富士の頂に積もった雪をイメージしながら描いたという。その富士は、画面には見えないが、見た目の感触を、小袖の深川鼠の色に込めているそうだ。

美人画を得意とした清方にして、戦後の再出発もまた、美人画を押し立ててのものだったわけである。戦時中、美人画は非国策画として弾圧された。それがやっと遠慮なく描くことができるようになって、清方としては、晴れがましい気持ちだったに違いない。

(1946年 絹本着色 168.0×87.5㎝ サントリー美術館)





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