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十一月の雨:鏑木清方




「十一月の雨」は、昭和31年(1956)の白寿会に出展したもの。時に清方は七十八歳だった。これも「朝夕安居」同様、東京の庶民の暮らしをモチーフにしているが、その服装等から見て、やはり明治の昔の暮らしぶりのようである。清方は、明治という時代に特別の愛着をもっていたようだ。そうした愛着は、随筆からもうかがえる。

雨が降る通りを、蛇の目傘をさした女性がふと振り返り見るのは花屋の荷車、これに様々な花を乗せて、売り歩いているのだろう。その背後には、建行燈に十三里と記した店がある。十三里とは、焼き芋屋のこと。九里(くり)四里(より)うまい十三里をもじったものだ。右隣の店の前には柳の葉がなびいている。雨にはやはり柳が似合う。

全体に、筆を抑え気味に使っているが、傘を持った女性など肝心な部分は、色あざやかに、しかもメリハリをつけて描いている。

(1956年 紙本着色 54.7×81.5㎝)





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