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虫の音:上村松園の美人画




上村松園には、絵画史上の先行作品を参考にし、それを換骨堕胎して自分の作品に取り入れる傾向があった。歌麿らの浮世絵美人画は、松園がもっとも利用したものだが、この「虫の音」と題する作品は、近世初期の風俗画「彦根図屏風」を踏まえた作品。

画面右手には、彦根図屏風の図柄が、多少変形されて採用され、左手には遊女たちが書き加えられている。そのうちの一人は、垂直な柱にもたれかかっている姿である。

近世初期の風俗画に取材した作品は、松園以外にも多くの画家が作成した。批評家の中にはそうした風潮を芸術上の堕落として攻撃するものもあったが、松園はそういう攻撃には耳を傾けなかった。

なお、この作品は鏑木清方が否定的に批評している。模倣のために連綿とした情緒が漂ってこないというのだ。

(1909年 二曲一双、絹本着色 85.0×161.5cm 奈良市、松柏美術館)





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