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青眉:上村松園の美人画




「青眉」とは、眉毛を剃り取ったあとの青々とした状態をさして言う。昔は、女性が結婚して子どもが生まれると、そのしるしとして眉を剃り、青眉と称した。松園は自分自身の母親の若い頃の青眉を覚えていて、そのイメージをこの絵に込めたもののようである。

松園は「青眉抄」という文章のなかで、青眉について次のように書いている。「私は青眉を想うたびに母の眉を思い出すのである。母の眉は人一倍あおあおと瑞々しかった。母は毎日のように剃刀をあてて眉の手入れをしていた。いつまでもその青さと光沢を失うまいとして、眉を大切にしていた母のある日の姿は今でも目をつぶれば瞳の裏に浮かんでくる・・・私のいままで描いた絵の青眉の女の眉はこれ母の青眉といってよい」

松園の眉へのこだわりは、母への強烈な思慕の感情と結びついていたようである。

これを描いた昭和九年(1934)は、松園の母が死んだ年だ。松園は亡き母の面影を心に抱きながらこの絵を描いたのであろう。小袖を着て日傘を差した女の表情には、落ち着きと瑞々しさが同居している。

(1934年 絹本着色 75.0×81.0cm 吉野石膏蔵)





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