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鴛鴦髷:上村松園の美人画




上村松園は京都の伝統に強くこだわった。なかでも女性の髪形には強い関心を寄せ、自分自身で髪型を考案しては友人に結ってやったという。この「鴛鴦髷」と題する作品は、そんな松園の髪型へのこだわりをうかがわせるものだ。

鴛鴦髷というのは、髷の後部を二つに割って、鴛鴦のように仲のよいさまを表現したものという。この絵の中の娘は、その髷を結ってもらって、手鏡で出来栄えをチェックしているのであろう。娘の初々しさがストレートに伝わってくる絵である。

松園は、「青眉抄」の「髷」と題する部分で、自分の髷へのこだわりを披露している。髷は土地によって流行が異なり、都市と農村の間、関東と関西の間に違いがある。そんななかで松園は京都で好まれる髷を列挙しているのだが、丸髷、つぶし島田、先笄、勝山、両手、蝶々とずらりとならんだ名前のなかに、「おしどり」も出てくる。その一覧表を、小生のような無粋なものが見ても、詳しくはわからない。

なお、鴛鴦髷の特徴については、松園は「好きな髪のことなど」という小文の中で次のように書いている。「をしどりは元来京風の髷で、島田に捌き、橋をかけたその捌きが鴛鴦の尻尾に似てもをり、橋の架かった左右の二つの髷を鴛鴦のむつましさに見立てたわけなのでせう。芝居では椀久の嫁さんが結ってをり、三勝半七のお園の髪もたしか鴛鴦だったと思ひます」

(1935年 絹本着色 66.5×72.0cm 個人蔵)





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