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晩秋:上村松園の美人画




「晩秋」と題するこの絵も、母への追慕をモチーフにした作品。「夕暮」と並んで、松園晩年の傑作である。「夕暮」では、針仕事にいそしむ女性が描かれたが、ここ絵では、障子紙のほころびを繕う女性を描いている。女性は若い姿で描かれているが、松園はそれに亡き母の面影を重ねたという。

青い無地の小袖に、単純な縞模様の博多帯を締め、黄色い帯止めで結んである。黒い掛け袷からは、薄桃色の襦袢が垣間見え、多少の色気を感じさせないでもないが、全体として、清潔な印象である。黒髪は、明治の若い女性の間で流行した「粋書」というスタイル。

色彩的には非常に大人しく見えるが、渋い中にもそれなりの変化をもたせ、構図の単純さとあいまって、かなり様式的でかつ抽象的な趣を感じさせる。

障子の枠の縦線を構図の決め手として生かしているところは、松園の若い頃からの特徴である。

( 1943年 絹本着色 183.0×87.0cm 大阪市立美術館)





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