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ゴンドラの唄:竹久夢二の美人画




セノオ音楽出版が、大正年間から昭和初期にかけて楽譜の出版をしたところ大いにあたった。そのプロジェクトに夢二もかかわった。セノオ楽譜は表紙にしゃれた絵を配しているのが人気を呼んだ。夢二の絵は、楽譜の表紙としてふさわしかったと見え、大いに好評を博したという。

セノオ楽譜は当初、「ドナウ川のさざなみ」を始め、西洋音楽の小曲が中心だったが、1914年に「カチューシャの歌」が大ヒットすると、流行歌を多く手掛けるようになった。「ゴンドラの唄」は1916年に上演された舞台「其の前夜」の劇中歌として、当時人気絶頂の女優松井須磨子が唄って大ヒットした。

これは、その曲の楽譜カバーとして作成したもの。ゴンドラを浮かべた運河を背景に、女が身をくねらせたポーズでこちら(観客のほう)を見つめている。女の表情には退廃的な雰囲気がただよっている。

女は一応洋装だが、彼女が醸し出している雰囲気は日本的だ。ゴンドラの唄もまた、西洋的なものと日本的な情緒を組み合わせていた。それを「新小唄」と呼んだそうだ。

(1916年 木版画 18.7×11.7㎝)




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