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黒船屋:竹久夢二の美人画




「黒船屋」と題するこの絵は、夢二の美人画の頂点をなす作品。当時、夢二がかぶれていた南蛮趣味を表現したものだ。「黒船屋」は実在する店ではなく、想像上のものらしいが、そこに「港屋」の影を見る見方もある。

構図は非常にすっきりしている。黄色く塗りつぶされた背景から女の全身が浮かび上がってくる。女の着物の色は黄色の同系色なのだが、彩度を変えることで遠近感を作っている。

ヴァン・ドンゲンの「猫を抱く女」にヒントを得たといわれる。たしかに、半身像と全身像の違いはあるが、構図的には非常によく似ている。

モデルは、当時付き合い始めた佐々木カ子コと言われる。カ子コはお葉という愛称で知られる。雰囲気一杯にポーズをとる才能があり、以後夢二の多くの作品のモデルを務めている。

猫を男根の象徴とみなし、それを抱くのは娼婦の仕業だとする見方もあるようだが、うがちすぎだろう。

(1919年 絹本着色 130.0×50.6㎝ 竹久夢二伊香保記念館)




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