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黒猫(女十題のうち):竹久夢二の美人画




「黒猫」と題するこの絵は、「女十題」シリーズのなかで最も人気の高いもの。女が黒猫を抱いている構図は、「黒船屋」とよく似ている。だが、「黒船屋」が日本の女を描いているのに対して、これは西洋の女を描いている。長崎という土地柄を物語る一作である。

おそらく現実のモデルを前に描いたのだろう。単なる創造ではなく、生きた女の息吹が伝わってくるからである。その女は、ブロンドの髪に椿の花弁を指して、両腕で黒猫を抱きながら、観客に向かってなにかを語りかけている。

猫が背中を見せているのは、「黒船屋」と同じである。もし前を向いていたら、おそらく女の存在感を食ってしまうのではないか。そのあたりに夢路の計算を感じる。

(1921年 紙に水彩 39.1×28.8㎝ 河村コレクション)




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