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晩春:竹久夢二の美人画




「晩春」と題するこの絵は、雑誌「グラフィック」の大正15年4月号に掲載された水彩画。「グラフィック」の詳細はわからないが、タイトルからして、美術愛好家向けの実用雑誌だったのであろう。

和装の女性が、窓を背にして正座し、となりにちょこんと座った猫のほうに目をやっている。その猫は猫で、あらぬ方角に気を取られている。ミスマッチな飼い主と猫のコンビネーションが、いかにも猫好きの人の雰囲気をただよわせている。

女性の背後の窓ガラスは、湿気で曇っているように見える。晩春から梅雨時にふりかわる雨の多い時節なのであろう。部屋の中まで、なにやら湿気の多い濃密さを感じさせる。

女性の着物の柄は夢二得意の衣装デザイン。脇にかかっている着物の柄も夢二好みなのだろう。猫のまだら模様まで、夢二がデザインしたような錯覚を受ける。

(1926年 神にペンと水彩 33.0×22.8㎝ 岡山市、夢二郷土資料館)




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