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憩い:竹久夢二の美人画




「憩い」と題する作品は、竹久夢二にはめずらしく、二曲一双の屏風絵である。日本画の伝統である屏風絵に、西洋風のモチーフを描いたところが、夢二らしい奇抜なアイデアだ。

上は右隻。ブドウ棚の下に据えられたテーブルに、若い女が座り、両肘を支えにして両手に顎を預けている。その表情はうつろに見える。テーブルには二脚の椅子が添えられているが、一脚は空席のままである。その椅子への主人の不在にもまして、若い女の表情には感情の不在が感じられる。



これは、左隻。男が柳の木の下に腰を下ろし、左手で体を支えながら、どこかを見つめている。その視線の先には、ブドウ棚の下の女の姿があるのだろうか。椅子における不在が、柳の木の下の存在につながっているというわけか。

(昭和初期 絹本着色 二曲一双 各117.0×111.9㎝ 岡山市、夢二郷土美術館)




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