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旅:竹久夢二の美人画




「旅」と題したこの作品の舞台は、群馬県の榛名山である。夢二は1930年に、「榛名山美術研究所」建設計画をぶちあげ、そのための募金を呼び掛けてもいるから、この作品は、その計画と何らかのかかわりがあるのだろう。

夢二の分身と思われる男と、お葉の分身と思われる女が、湖の傍らに置かれたテーブルを囲んでいる。男は座りながらコーヒーカップを手にし、女は果物をいっぱいに盛ったかごを男に向かってさしだしている。二人の間には、白い犬が介在していて、テーブルの上をのぞき込んでいる。

のんびりした雰囲気を感じさせる絵柄である。これを夢二は、二曲の屏風に描いた。ところどころパステルを使うことで、画面にアクセントを付与している。吹きだしの文字は「久にしてゆたかに飯をくひにけり何か心のたのしむごとし 榛名山幻想」と読める。

なお、夢二は、この絵を描いた直後の1931年5月に、欧米旅行に出かけてしまうので、榛名山美術研究所構想はとん挫した。

(1931年 紙本着色・パステル 二曲一隻 110.0×96.8㎝ 河村コレクション) 




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