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裸婦:萬鉄五郎のキュビズム風肖像画




「裸婦」と題するこの作品は、キュビズムの影響を感じさせるが、単なる模倣ではなく、萬なりの解釈を施してある。そのことは、技法的にはキュビズムを取り入れながら、全体としての印象は、なるべく具象的なイメージを尊重するところに現れている。

1919年の二科展に出展した「女の像」とほぼ同じ構図であることから、こちらはそれの習作としての位置づけだと思われる。「女の像」は現存せず、写真が残っているだけだが、両者を比較すると、「女の像」のほうがずっと明るい画面であり、また、キュビズム的な要素を弱めてある。おそらく新たな画境を模索していたのだろう。

物思いにふけっている女の表情が印象的だ。彼女は物思いにふけりながら、両手で股間を覆うなど、他人の目をはばかってもいる。そうした心の動きを感じさせるところが、この絵に独特の躍動感を与えている。

(1918年 カンバスに油彩 46×34㎝ 神奈川県立近代美術館)




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