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ほほ杖の人:萬鉄五郎の裸婦像




最晩年の裸婦像「ほほ杖の人」は、その三年前の作品「ねて居る人」とよく比較される。「ねて居る人」は、ベッドの上にあおむけに寝ころがった裸婦を描いたもので、裸婦の姿がかなりデフォルメされる一方、背景はごく単純化されたいた。裸婦は両脚を組んだりして、体をくねらせているのだが、画面からはダイナミックな動きは伝わってこず、かえって静謐な印象のほうが強い。

対してこの「ほほ杖の人」は、安楽椅子に腰掛けて真正面をむく裸婦が、左手でほほ杖をついている姿を描いているので、表面的には動きに乏しい画面なのだが、よくみると、今にも立ち上がって動き回りそうな雰囲気を感じさせる。

この絵の特徴は、女が日本風の髷を結っていたり、和服らしいものをカバー代わりにしていたりと、なにかと日本風の雰囲気を感じさせるところだ。

「ねて居る人」と、この「ほほ杖の人」との間に、萬は男女の裸体画を何点か描いているが、どれも極端にデフォルメされている。それらに比べれば、この「ほほ杖の人」には、あっさりした造形性を指摘できる。

(1926年 カンバスに油彩 117.0×80.0㎝ 東京国立近代美術館)




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