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水着姿:萬鉄五郎の人物画




「水着姿」と題したこの絵は、日傘をさした女性をモチーフにしていることから、「若い頃の作品「日傘の裸婦」を想起させるが、「日傘の裸婦」には前衛芸術への気負いがみなぎっているのに対して、この絵は単純な平明さが持ち味である。背景の海も、またモチーフの人物も単純化され、色彩は清明である。

萬は、この絵のイメージをあらかじめ頭の中で組み立て、それをカンバスに定着させたと言われる。そのイメージの中心は水着であって、その水着はグリーンにオレンジの縁取りがなければならなかった。そこで萬は、東京までそのイメージにあう水着を求めに行ったのだったが、東京では見つからず、かろうじて横浜で見つけたそうである。

実写ではなく、写真をもとに構図を決めたという。だがイメージを生かすために、八月頃から一ケ月ほどかけて完成させた。作品は翌年(1927)の第五回春陽会展に出展された。そお展示会の終わるころに体調が急変し、萬はそのまま死んでしまったのである。

(1926年 カンバスに油彩 118.0×81.0㎝ 岩手県立美術館)




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