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法隆寺、中宮寺、薬師寺:奈良古寺めぐり(二)



(法隆寺金堂及び五重塔)

三月十日(火)昨夜就寝の際湿布を施せしにかかはらず、目を覚ますに右膝の痛み未だ去りやらず。歩けるや否や不安にて、如何せんと迷ひしが、天よく晴れ渡り、室内に閉居するは勿体なしと思ひ、強行せんと欲す。ただし予定の一部を変更し、この日は平坦なところを歩むこととす。

朝餉を喫して後、JR奈良駅よりローカル線に乗り法隆寺駅に至る。そこよりバスに乗れば法隆寺門前まで運ばるるなり。門前の松林暖かき日差しを浴びて穏やかに立ち並びたり。また、法隆寺の諸堂も光を反射して、堂宇に著しき明暗対比を演出してあり。

五重の塔の内部を瞥見す。釈迦の生涯を描きし塑像群を眼前に見る。正面には釈迦三尊像、その背面には釈迦入滅の様子を示す塑像群あり。弟子たちの慟哭するさまを表現する塑像群なり。この慟哭する様子を日本人の信仰心の浅はかなる例として強調する意見もあれど、美術品として見ればなかなかのものなり。

金堂内は、中央に釈迦三尊像、その左右に薬師、阿弥陀の両如来座像および四天王像など並べ置かれたり。講堂内は、薬師三尊像安置せられてあり。講堂の縁側より五重の塔を眺めをるに、寺男より声をかけらる。彼、五重の塔・金堂それぞれにぶら下がりをる風鐸の折からの風にあふられて音をたてをるを聞けといふなり。耳を澄ませて聞けば、たしかにそれぞれの風鐸の風にあふられて音をたてをるなり。五重塔のものは、形小さければ高音を発し、金堂のものは形大きければ低音を発す。これらの音は天平の昔より今日までかはらず音を響きをるなりとて、寺男いささか感慨にたへぬといふ表情をなせり。

続いて百済観音堂を見る。この堂、百済観音像を収容するために特別に建設せらるといふ。百済観音像のほか、玉虫厨子、橘婦人念持仏の厨子なども収容せられてあり。東院の夢殿観音は、閉扉せられてあり。

夢殿に隣接する中宮寺をもあはせて訪ふ。こちらは、例の半跏思惟像一体のみにて成り立ちをると見え、そのほかには見るべきものなし。されど、この像ひとつにても立ち寄る価値はあるなり。


(薬師寺)

中宮寺前よりバスに乗り、薬師寺に至る。バスより下る頃雪降り来る。大粒の雪烈風にあふられて舞ひ乱るさま頗る幽玄を感ぜしむ。

左右一対の塔のうち国宝の東塔は目下修理中にて養生のシートを被されてあり。金堂内には薬師三尊像、講堂内には弥勒如来像鎮座ましましたり。この薬師三尊は、見るたびに新たな発見あり。こたびは、日光月光両菩薩の肢体に性的衝動のほとばしりをるさまを感得したり。薬師寺を見終わる頃雪降り止みたり。







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