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貞観彫刻2:新薬師寺の薬師如来坐像



(新薬師寺の薬師如来坐像、木造、像高190.3cm)

神護寺の薬師如来像とならんで、貞観彫刻の最も古い作品に新薬師寺の薬師如来坐像がある。ヒノキの一木彫で、背面に頭部に及ぶ長方形の内刳りをしてある。口ひげを墨で描き、唇を赤く塗ってあるほかは彩色を施しておらず、木彫りの素地を生かしている。

全体の印象としては、奈良時代の自然な姿の仏像に比べて、かなりな作為性を感じさせる。体躯のボリュームのある質感、表情のどぎつさ、衣文の切れ込みの鮮やかさなどは、奈良時代以前の仏像には見られなかったものである。

とくに顔の表情が印象的である。両眼をきっと見開き、上下の瞼が盛り上がったさまは、見る人をその視線に釘づけにするような迫力を湛えている。また、横からみると尖った鼻がギリシャ鼻を思わせ、体躯の厚みが一層強調されて見える。

衣文は深くて鋭く彫られている。注目すべきなのは、下腹部の茶杓型の断ち切られたような模様の衣文で、これは唐代の石彫りの仏像によく見られるものだそうである。





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