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竹林に猿蟹図:雪村の世界




「竹林に猿蟹図」は、雪村の最晩年、三春時代の作だろう。真竹の林の中で、蟹をつかまえよとする猿たちを描いている。蟹は藻屑蟹と思われる、それを一匹の猿が左手をのばしてつかもうとし、その背後では三匹の猿たちが様子を見守っている。猿たちの様子や表情からみて、前方にいて蟹をつまもうとしているのがボス猿なのだろう。

しかしボス猿にしては、あまり威勢はよくない。蟹を前にして腰が引けている。左手でつかもうとはしているが、この姿勢ではおそらく捕まらないだろう。後ろに待機する猿たちも、そんなボス猿を馬鹿にしている顔つきだ。なんともユーモラスな眺めといってよい。

屏風一扇分の大きさに、四枚の紙をつぎ足して描いている。款記には、「継雪村老翁図之」とあり、印章は白文方印で「鶴船」。竹の幹の部分に表示され、絵の一部になっている。

(掛幅 紙本墨画 120.7×47.2㎝)





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