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月夜山水図屏風:曽我蕭白の世界




大津市の近江神宮に伝わる「月夜山水図屏風」は、京都の久昌院に伝わる「山水図」とともに、蕭白山水図の代表作というべきものだ。蕭白の山水図の特徴は、やたらと細部にこだわることで、そのためゴチャゴチャとした印象を与えもするのだが、その分ユニークさを主張している。

白井華陽の画人伝「画乗要略」には、蕭白が曽我派の蛇足とならんで、雲谷派の等顔にも学んだとある。雲谷派は萩を拠点としたローカルな一派で、京都では無名に近かったが、蕭白はあえてその画風を取り入れることで、独特の境地を開いたのであろう。

これは六曲一双のうちの左隻部分。切り立った断崖、金色の霞、雲中の楼閣群といったものの描き方に、雲谷等顔の影響を見て取れる。等顔の特徴は、過剰なほどの描きこみということにある。萩はあの雪舟のいたところだが、等顔には一方で切り立った崖の描き方など雪舟を思わせる部分と、過剰な描き方と言う雪舟にはない要素とが混在している。

同時代の蕪村や応挙の山水画が、ゆったりとした平面に仕上げているのに対して、これは過剰さを感じさせる点で、時代の空気に挑戦しているところがある。

(製作年不明 紙本墨画 六曲一双151.4×366.0cm 大津市、近江神宮 重文)





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