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北斎諸国滝廻り(一):木曽路ノ奥阿弥陀ケ滝、美濃ノ国養老の滝


「北斎諸国滝廻り」のシリーズは、富嶽三十六景と並行する形で天保4年に発行された。版元は同じく西村屋で、富嶽三十六景の売れ行きを見ながら逐次刊行されたとされる。現存する絵は8点である。いづれの絵も、瀑布を流れ落ちる水のダイナミックな動きを様式的に表現する一方、それを眺める人々を配置することで、自然と人間との対比を強調しているところは、いかにも北斎らしいところである。


(木曽路ノ奥阿弥陀ケ滝)

阿弥陀ケ滝は、長良川の源流に近いところにある。だから木曽路の奥と言ってもよい。落差60mの雄大な滝だ。名前の由来は、16世紀に白山の僧侶道雅がここで修行中阿弥陀如来の面影が立ったところから来ているという。徳川時代には、白山詣でのついでに訪れる人が多かったという。

瀑布の描き方は、上の川水の部分を含めてかなり様式的である。滝の上部のハイライトをはっきりと浮かび上がらせることで、強烈なコントラストを演出している。

瀑布の傍らの地面に蓆を敷いている人々は、白山詣での人たちと思われる。


(美濃ノ国養老の滝)

親孝行の伝説の舞台となった養老の瀧は、いくつかの地にあるとされるが、この絵の滝は、今の岐阜県大垣市にある。

養老の滝と言えば、水ならぬ酒が流れているということになっているが、北斎は、この絵では酒ではなく水が流れているものとして描いた。瀑布は一直線に流れ落ち、滝壺を水しぶきで満たす。

滝壺付近では、何人かの人々が、滝を見上げたり、寛いだりしている。







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