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寄情丘壑図:富岡鉄斎の世界




「寄情丘壑図」と題するこの絵は、おそらく、晋書謝安伝の中の一節「安雖放情丘壑,然每游賞,必以妓女從」をイメージ化したものと思われる。謝安は字を安石といい、東晋の英雄として知られる。淝水の戦いでの勝利は有名である。英雄色を好むの喩えのとおり、つねに妓女を侍らしていたようだ。

この絵は、急峻な山岳地帯の一角の東屋で小宴を催す人々を描く。おそらく謝安その人が、管弦放歌しているのであろう。東屋は滝の上にあり、はるか下のほうから細い道が通じている。その道を歩く人は、東屋に酒を届けるのだろうか。

木の枝が赤く色づいているから、秋の景色である。丘壑といいながら、峻厳な山中をイメージしているのは、垂直方向への感覚を重んじた鉄斎らしい構図である。

(1917年 絹本着色 145.5×52.3cm 安来市、足立美術館)





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