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五道(とうつくし画帳より):河鍋暁斎の戯画




「五道」と題したこの絵は、「とうつくし画帳」シリーズの中の一枚。このシリーズは、日本橋大伝馬町の小間物屋勝田五兵衛の依頼で描いた一連の小型浮世絵のことで、暁斎はこれらを百枚以上描いたという。ほかに五兵衛の依頼で作ったものに「猩々狂斎風俗画帖」があり、いずれも暁斎を名乗る以前の幕末期の作品である。

「とうつくし」というのは、「とう」や「どう」のつく言葉を取り上げて、それをイメージ化したもので、「ととう」、「けんとう」、「すいどう」から「伊勢おんどう」、「かりんとう」などというものまである。ダジャレをそのまま絵にしているわけだ。

「五道」というのは、地獄から極楽まで輪廻にかかわる五つの道のことを言う。それをモチーフにしたこの絵は、なぜかダルマが描かれている。ダルマが悟りを開いて極楽道に至るということだろうか。

そのダルマは、破れた障子の穴からギョロ目をのぞかせている。目玉を黒々と描くのは暁斎の特徴だ。この絵の目玉は、濃い鼠色に真っ黒な虹彩を重ねている。左下の障子の破れ目からはダルマの赤い法衣の一部と指先がのぞいているが、この指先が何を暗示しているのか、この図柄からはよくわからない。

(幕末期 紙本淡彩 11.6×15.5㎝ 河鍋暁斎記念美術館)






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