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耳長と首長:河鍋暁斎の戯画




「耳長と首長」を描いたこの一枚は、「天狗の鼻切り」とともにエドワード・モースが日本滞在中に収集した暁斎の戯画九点のうちの一枚。真ん中に長い耳の男が、その右手に首の長い男が描かれている。長い耳には小人たちがぶら下がり、長い首の上の頭には飛び出た目の上で小さな男が望遠鏡で耳長をのぞき込んでいる構図だ。

これらが何を寓意しているのか、よくわからない。首長のほうはろくろ首を連想させる。耳の長いのは布袋を連想させる。これらをモチーフにした妖怪が、明治のころは見世物として流行っていて、暁斎はそれを描いたのかもしれない。

耳長の男は、生まれつき耳が長かったのではなく、小人たちに耳を引っ張られて長くなったのかもしれぬ。だがその可能性はあまり大きくはないようだ。もともと長かった耳を、小人どもがおもしろがって、それにぶら下がったと考えた方がわかりやすい。耳を引っ張られた男は、両手で合掌しているが、これは何を意味しているのか。大きく口を開いて苦しそうな表情をしているので、仏様に助けを求めているのかもしれぬ。

一方首長のほうは、長い首が宙に浮いているように見える。このように首だけを強調するのは、ろくろ首と同じだ。面白いのは、二つの目玉が飛び出て、その上に小人が乗っていることだ。その小人が望遠鏡でのぞいているのは耳長だと思うのだが、なぜまた望遠鏡などを引っ張り出したのか。そんなものを使わないでも十分見えるはずだ。

(明治四年ころ 紙本淡彩 24.5×18.5㎝ ピーボディ・エセックス博物館)






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