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九尾の狐図屏風:河鍋暁斎の妖怪画 |
画面の中央に描かれている狐は九尾の狐といって、中国の伝説上の怪物である。それが日本に伝わって様々な伝説と結びついたが、なかでも謡曲「殺生石」で語らえている伝説が有名である。それによると、九尾の狐は中国では妲己となって殷王朝を亡ぼし、天竺では華陽夫人となって残虐の限りを尽くし、日本では玉藻の前となって鳥羽上皇をたぶらかそうとしたが、見破られて那須野の殺生石に封じ込められたということになっている。 この絵では、九尾の狐の前に二人の男が腰を下ろし、くくり縄を結んで狐を捉えようとしているように見える。二人の男が誰かについてはヒントがある。左側の男は中国風の帽子をかぶってそれに王という文字の徽章をつけていることから中国の王と思われる。右側の男は風体や衣装からしてインドの神だと思われる。その二人が協力して九尾の狐をくくり縄で捉えようとしているように伝わってくる。 くくり縄の手前には富士山の模型が置かれているが、これは何を意味するのか。日本に現れて悪さを働く九尾の狐を、中国とインドからやってきた人々が捉えようというのだろうか。 九尾の狐は、一本の尾っぽの先が九つに分かれているように描かれるのが普通だが、この絵の狐の尾っぽは根元から九つに分かれている。つまり九本の尻尾が生えているように描かれている。そのため、狐の威容はますます迫力を感じさせる。 (紙本墨画淡彩 二曲一隻 99.0×115.7㎝ 河鍋暁斎記念美術館) |
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