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江水散花雪:月岡芳年の歴史画




「江水散花雪」と題した三枚組のこの作品は、いわゆる桜田門外の変を描いたものだ。桜田門外の変とは、安政七年に水戸の浪士ら十数名が大老井伊直弼の一行を江戸城桜田門外で襲撃した事件だ。直弼は安政の大獄など強権的な手法で反対者を弾圧し、開国政策を推進していたが、それを攘夷派に恨まれ、当時の攘夷派の中心だった水戸の浪人たちによって排撃された。

襲撃に加わったのは水戸藩の脱藩浪人17名と薩摩藩士1名の計18名。一方井伊直弼の一行は彦根藩士約60名からなっていた。襲撃はとっさのことだったので、彦根藩は有効な防御ができず、あっさりと直弼の首をとられた。首をとったのは薩摩藩士有村治左衛門だった。

この絵は、中心部に水戸の佐野竹之助を描き、有村は左端のほうに小さく描かれている。水戸の浪人たちと彦根藩士たちがそれぞれ刀を振り回して戦う様子が微細に表現され、雪の日を強調するように、暗い空の下に白く積もった雪が印象的である。



これは佐野竹之助の部分を拡大したもの。佐野は当時二十歳を過ぎたばかりの若輩だったが、この事件を代表する人物として有名になった。山川菊栄によると、佐野は思慮の足りない暴れん坊だったという。

(明治七年<1874> 大判三枚続)





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