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明治風俗十二か月その四:鏑木清方




十月は長夜。秋の夜長を、三人の母子がそれぞれなりわいにいそしんでいる。母親は針仕事、姉は御習字、弟は読書、宿題に出された文章を読んでいるのであろう。頭上には石油ランプがぶら下がっている。これで照明をとっていたのだろう。壁には柱時計がかけられ、そのわきには神棚のようなものが見える。秋たけなわの一光景、コオロギのすだく声が聞えてきそうである。



十一月は平土間。芝居小屋の光景だそうだ。昔の芝居小屋では、観客は平土間に座って見物するのが普通だった。この絵の中には二人の女が描かれているが、彼女らは芸者とお酌だそうだ。立っているのが芸者で、これから一杯やりながら芝居見物をするつもりだろう。



十二月は雪。うっすらと積もった雪を、ガス灯の光が照らす。雪は人力車の蓋にも、車夫の肩にも積もっている。人力車に乗っている女は、御高祖頭巾をかぶり、フラシ天のショールを羽織っているが、おそらくはその道の女か。年が押し迫ると、忘年会に出る機会も多い。女はこれから、その会場に向うところか。





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