日 本 の 美 術 |
HOME|ブログ本館|日本文化|美術批評|東京を描く|水彩画 | プロフィール|掲示板 |
待月:上村松園の美人画 |
![]() 「待月」とは、月見の折に月の出るのを待つことを言う。京都では古来庶民の風習になっていた。松園は京都人として、この待月の雰囲気を画面に定着したかったのだろう。 この絵の待月は、立ちながら月の出を待っているところから、陰暦17日の「立ち待ち月」を描いたもののようである。18日になると月の出の時刻は遅くなるので、立って待つわけにもいかず、座って待つ「居待ち月」となり、さらに19日になると夜半にさしかかるので、寝て待つ「寝待ち月」となる。 黒い薄物を着た女が、二階の廊下の手すりごしに月の出るのを待っている。影のつけ方からして、光源は右斜め上のはずだが、おそらく月の光ではなく、人口の明かりだろう。女が見ている方向は画面中央の奥にあたり、その方向に月が出るのを予想しているように見える。 この作品は、画面の中央に柱を配し、そのことで画面が左右に分裂しているので、構図上不安定だという批判がなされた。しかしそれを松園が気にした気配はない。松園は、画面に垂直の線を入れるのを好んだのである。 (1926年 絹本着色 194.0×106.0cm 京都市美術館) |
![]() HOME | 上村松園 | 次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013-2021 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |