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風濤図:雪村の世界




「風濤図」は、天文十七年(1548)前後に円熟期を迎えた雪村の代表作。風に騒めく波を超えて進む帆掛け船のけなげな様子を描く。本図を収めた古い箱の表に「山水帆掛け船 雪村筆」と記されていることから、もともとは山水帆掛け船と題されていたことがわかる。「風濤図」という題は、近年つけられたものである。

初期の作品「瀟湘八景図画帖」のうち、「遠浦帰帆図」をもとにしたもの。港へ戻る帆掛け船をモチーフにしたものだ。海面には波がたち、岸辺の松の木は風にゆらめき、その影に立つ茅屋はいまにも吹き飛ばされそうに見える。単に、海上を進む帆掛け船を描くにとどまらず、自然の厳しさを描くことで、人生の厳しさを暗示しているようである。

波の描き方に雪村らしい特徴をみることができる。後年の「波岸図」と同じく、単純な線の繰り返しによって立つ波を表現している。松の枝の描き方にも、雪村らしさを見ることができる。

(掛幅 紙本墨画淡彩 22.1×31.8㎝ 野村美術館 重文)





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