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市中繁栄七夕祭、大伝馬町こふく店:広重の名所江戸百景



(73景 市中繁栄七夕祭)

この絵からが、秋の部。市中とあるだけで、場所の明示はないが、おそらく広重が住んでいた南伝馬町あたりだろうと思われる。そのあたりは賑やかな商業地で、この絵にあるような蔵が櫛比していたし、南西の方角には富士がよく見えた。

この絵は、商家や仕舞屋の屋根にそびえる七夕の笹飾りの林立する様子を描いている。笹の飾りには、短冊のほか紙細工や吹き流しのようなものがあり、賑やかな限りである。

伝馬町あたりの商家の先には江戸城の櫓が見える。更にその先にくっきりと浮かび上がった富士が見える。いまでは東京から富士が見えるのは冬の間だけだが、徳川時代には、夏でもよく見えた様子が、この絵からは伝わって来る。


(74景 大伝馬町こふく店)

大伝馬町はもともと奥州街道の宿駅であったが、街道の道筋が変って以降は、宿駅の機能はなくなり、そのかわりに木綿問屋が多く進出、一躍江戸有数の商業地になった。

その大伝馬町に、京都の呉服商大丸屋が、元文三年(1738)に進出し、先輩の越後屋にならって、現金掛け値なしの商売を始めた。大当たりして、現在に至る伝統を形成した。

左手に大丸の店舗が描かれている。その前を歩く一行は、上棟式に臨む大工の一行。先頭を行くのが統領で、上棟式に使う御幣を飾り付けた棟木を持っている。これを地面に打ち込んで、工事安全を祝った。





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