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月影:上村松園の美人画




松園は早くに父をなくし、母親の手一つで育てられたこともあって、母親への思慕を思わせる作品が多い。「月影」と題したこの絵は、母娘のむつましいたたずまいを表現した作品。母親が柱の影から顔を出して月を眺めあげ、その背後には幼い妹娘が控える一方、姉娘のほうは廊下に映った松の木影を見つめている。

柱を画面のほぼ中央に据えているのが特徴で、これと似た構図は後年の「待月」にも採用されている。柱の垂直線と、斜め方向の線とを組み合わせることで、構図に変化を与えようとしている。

姉娘の振袖には、夕顔の模様が染め出されているが、夕顔は秋の気配を感じさせる。こんな小道具にも、松園は心配りをしているわけだ。

なお、この作品は文展第二回展覧会に出展され、三等賞をとった。

(1908年 絹本着色 171.8×100.0cm 永青文庫)





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